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活動報告

【九州】平成29年度第7回「ゲノム講習会」を開催しました

開催日/
2018年01月30日
内 容/

 平成30年1月30日(火)18時より「九州がんプロ養成プラン ゲノム講習会」において、「Precision medicine時代におけるがんゲノム解析の基礎とゲノムの多様性」について講演した。近年、臨床検体を用いた次世代シークエンサー(Next generation sequencing: NGS)によるゲノム解析が急速に普及している。シークエンス技術の革新により、塩基配列解読の高速化、高精度化、低価格化が進み、NGSは身近なものとなった。一方、大量のデータ解析・解釈が問題となっている。NGS解析ではがんを異常なゲノム情報の塊として捉え解析する生命情報科学(バイオインフォマティクス)が重要な役割を担う。講習会では、NGS解析・バイオインフォマティクスにより明らかとなったがんゲノムの全容(包括的ゲノム解析)について発表した。特にがん治療を行う上で重要な概念である「がんゲノムの多様性」に着目した内容とした。

 がんゲノムの多様性を考える上で、「腫瘍間(患者間)多様性」と「腫瘍内多様性(不均一性)」を区別する必要がある。NGS解析によりその全容が解明されつつある。「腫瘍間(患者間)多様性」解析は、がんゲノムの原発巣別・組織型別・個人間の違いを明らかにする試みである。遺伝子情報の違いに基づく治療方針の層別化・個別化を確立することが、Precision medicineである。

 一方、「腫瘍内多様性(不均一性)」解析とは、多領域シークエンスにより近年明らかとなった空間的ながんゲノムの不均一な分布を解明する試みである。遺伝子診断の問題(1箇所の生検で診断を行うことの是非)や、治療抵抗性の一因と想定されている。なお空間的な多様性を解析することで、発がん過程、がんの進展、治療、再発という時間的な「がんの自然史」を解析することが可能であり、「がんのクローン進化」と呼ばれる。この手法を用いることで、治療後の再発クローンが有する特徴の解明につながると期待される。

 Precision medicineを実現する中で、NGS解析・バイオインフォマティクスの重要性が益々高まり、がんの多様で複雑な病態も明らかとなった。がんゲノムの多様性に基づいた治療戦略を考える必要があり、参加者と活発な意見交換を行った。有意義な講習会であった。

 

作成:臨床放射線科学分野 医員 平田秀成(今回の講習会講師)